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高齢対策と家族信託

~ 親なきあと対策と福祉型信託 ~

 わが子に障がいがある親は、常に「私が死んだらこの子はどう生きていくのだろう」という不安を抱えています。また、老齢の方にとって自分が認知症になった場合、財産管理や入院・入所時など、費用の手当は大丈夫だろうか、家族に大きな負担を強いることになるのではないだろうかと不安になります。あるいは自身の所有する資産をを遺言書だけでは、希望する資産承継とはならない場合もあります。老齢を迎える方々が安心して安全に暮らせるために2007年に施行されたのが民事信託(家族信託)という仕組みです。

家族信託ってナニ?

 家族信託という言葉から受ける印象は、投資信託の仲間かと思われがちですが、その仕組みは全く違います。「信託」という制度を少し振り返ってみると、日本で信託制度ができたのは大正11年でした。この信託が2006年に制度改正され、2007年に施行。民事信託という仕組みが追加されました。民事信託には「福祉型信託」、「家族信託」、「ペット信託」などと、その利用目的に応じてさまざまにネーミングされています。このページでは、主に「家族信託」という名称を使用してその仕組みを解説します。



 ここで、一つの事例を挙げて説明してみます。

  • 父は、自分が認知症になったら財産管理はどうしたらいいだろうと悩んでいました。
  • いろいろ調べていくと、認知症になってしまった場合、自分の医療費や入所費用に充てるよう準備している定期預金は、妻でも解約できなくなる。また所有する不動産を売却することもできなくなるという事が分かりました。
  • そこで、家族信託の制度を使って、①自分の医療費、入所費用、その他の費用と、②妻の生活費や医療費、入所費用などに必要になるであろうと思われる金銭を息子に預かってもらって、必要な時に支出してもらうよう頼むことにしました。

 この事例では「父」が自分と家族の将来を考えて、家族信託を利用しようと考えています。この信託は頼む人は父、頼まれる人は息子、利益を受取るのは母と、家族の中だけで信託関係者が完結しますので、「家族信託」と呼ばれます。しかし、口約束だけでは制度の仕組みを利用したとは言えません。


    信託法ではそれぞれ以下のように言います。
  • 父=委託者
  • 息子=受託者
  • 父、母=受益者

 家族信託は数年から数十年にわたる長い期間続きますので、信託期間中に思いがけないトラブルがあっても、父の希望する財産管理が、父が亡くなった後も長期間にわたって確実に機能するよう、いくつかの守らなくてはならない決まりごと(信託法)があります。家族信託を利用するには民事信託コーディネーター®と呼ばれる専門家や司法書士、弁護士などに依頼し、「信託契約書」という公正証書の形をとることが必要になります。



親なきあと支援の福祉型信託

 冒頭で述べましたが、障がいのある子や引きこもりの子を持つ親にとって、自分の健康状態も心配ではありますが、子どもの将来の生活を守ってあげられるかどうかが、何よりも切実な悩みではないでしょうか。以下では、両親と娘、障がいのある息子の4人家族で家族信託を活用した場合の事例を挙げ解説します。


【事例】

 父は自分が認知症になった後のことや、亡くなった後のこと、とりわけ障がいのある息子の生活が心配でなりませんでした。息子は、日常生活はできるものの、財産管理は無理だろうと考えています。

 そこで、娘に自分の財産の一部を預けて、自分が認知症なったら自分の医療費や入所費用ほかを支出してもらい、自分の死後は妻に生活費、入院、入所費用などを支出、そして妻が認知症になったり亡くなったりした後は、息子に生活費やその他必要な費用を支出して息子の生活を守ってもらうように頼みました。

さらに、息子が亡くなった後に残った財産は娘に受け取ってもらう事にしました。


【スキーム図】

 上の事例では、父が最も心配している息子の生活を守るために、家族信託を利用した例です。もしも何も手を打たずに亡くなってしまった場合は、父の所有財産は相続財産ですから、まとまった財産が息子の所有物になります。その後、息子が財産管理をしながら安全に暮らしていけるかどうか、不安が残ります。


 そこで、家族信託で自分の死後も、自分の望む財産の処分ができるように設定し、さらに最終の残余財産についても、娘に受け取ってもらうとしたことで、娘も理解しやすくなった事例となりました。



家族信託契約の流れ

 上図で説明します。最初に皆さんからのご相談を受けます。内容によっては家族信託ではなく、別な制度の利用が良い場合もありますので、事情や現状、家族関係など何でもお話いただきます。


 次に相談事の解決方法として、家族信託でどのように設定するかを説明し、併せて費用面の説明も行います。相談者から家族信託の利用の了承を頂いた場合、相談者と家族皆さんに集まっていただき、家族信託の利用による財産管理や処分について家族の皆さんの理解と協力をお願いします。家族全員の理解を得ることはに非常に大事な作業です。


 家族の了解が得られた後は、「信託契約書」の原案を作成、提示します。その後公正証書の作成、そして相談者が託す信託財産を、分別管理するための作業を受託者が行います。当相談所も手続をサポートします。また、信託財産の中に不動産がある場合は、法務局への登記もおこないます。


 これ以降は受託者が、信託契約内容に沿って行動していただきます。これを受託者が行う「信託事務」といいます。前述のように信託は長い期間にわたって機能しますので、想定外のことがあったり、トラブルなどもあるかもしれません。ご家族から連絡を頂ければ、いつでも当相談所で継続してサポートいたします。


※委託者:信託財産を託す人
※受託者:信託財産の管理・処分などを引き受ける人
※受益者:信託財産から利益を受取る人


◇  ◇  ◇  ◇

 家族信託と成年後見制度が連携することで、「親なきあと」の悩み解決に大きな力を発揮します。以前からも、この連携を提唱する士業の先生も少なくありませんでしたし、ごく一部のようですが、信託業者を受託者として障がい者のいるご家族が活用しているケースもあるようです。しかし依頼者が受託者(信託業者)に支払う手数料が高額で、誰でもが利用できる制度ではありませんでした。将来のご家族の暮らしに日々頭を抱えている親御さんは、まずはご相談ください。当相談所では高齢者や「親なきあと」問題解決のご相談に対し、経済的負担を抑え、誠心誠意対応しています。


(文責:ファイナンシャルプランナー藏本光喜)