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保険見直し

 終活では相続対策が重要ですが、意外に忘れがちなのが「保険の見直し」です。保険契約は、「保険契約者」」、「被保険者」、そして「保険金受取人」3人が関係する契約だということはご存じだと思います。この保険金受取人を変更することで、相続対策になる場合があります。ほかにも相続税対策や保険料の軽減対策などがあります。


支払い中の保険料軽減策について

 加入中の保険料を減額したいという場合の見直しの方法を解説します。医療保険と生命(死亡)保険それぞれの考え方ですが、いずれの保険も解約して保険料をゼロにする方法がありますが、その方法は最終手段と考えましょう。

《医療保険》

  • ◎入院給付金を減額する
  • 入院給付金は通常入院した日数×給付日額で計算した給付金が受け取れます。給付日額を10,000円や5,000円などと定めて契約しています(最近は給付日額ではなく入院一回につき○○円という定め方の医療保険もあります)。

    一方で「高額療養費制度」という公的制度があり、1カ月間の個人負担の医療費の上限が決められていて、それを超えた医療費は支払わなくても良いことになっています(治療費以外は実費負担になります)。

    例えば1カ月間入院した場合の入院給付金は30万円(給付日額10,000円)、15万円(同5,000円)となります。加入中の医療保険の給付金額と自分の年齢では最高医療費負担額はいくらなのかを比較してみてください。その結果、入院給付金の減額が適切であるときは、この方法で毎月の保険料負担を減額することができます。
  • ◎付帯する特約の必要性
  • 医療保険には多くの特約があります。傷害特約、がん特約、先進医療特約などなど。契約書をチェックしてみると被保険者の年齢が○○歳で満期であったり、○○年更新と書かれている場合があります。子育てが終わり、ご夫婦の老後生活を考え始める時期がきたら、この特約も必要なのか不要なのかのチェックをしてみてください。

《生命(死亡)保険》

 保険見直しで相談を受けた場合、相談者も私も愕然とするときがあります。それは保険期間です。若いころに加入した生命保険は、あと何年すればやっと保険料は払わなくて済むと、払込期間満了を心待ちに頑張ってこられた方。保険期間をチェックしてみたら保険料の払い込みと同時に保険も終わってしまうというケースがありました。また、払込期間65歳満了で保険期間は70歳までなどというものもありました。

そこで保険料軽減を検討する前に、必ずチェックしていただきたいのは、保険期間です。今は男女とも90歳近くまで平均寿命が延びました。大丈夫でしょうか?是非チェックを。

  • ◎死亡保険金額の検討
  • 万一の時に家族が受け取る保険金額は適正かどうかは是非チェックしてください。かつては高額な保険金で家族に大金が入るように加入するという風潮がありましたが、最近は核家族化が進んだ影響もあり、最低限必要な死亡保険金額に抑え(保険料減額)、浮いたお金を貯蓄に回すという方が増えています。
  • ◎払い済み保険の検討
  • 生命保険は契約者の申し出により、加入中の保険を払い済み保険に変更することができます。つまり「今後は保険料の負担をゼロにしたい」という希望を叶えることができるという事です。

    生命保険は加入時からの経過年数に応じて「解約返戻金」という保険会社の準備金が積み上げられています。その金額に応じて払い済み保険への変更後の保険金額が改めて設定しなおされます。加入時の死亡保険金額からは受取保険金額は少なくなりますが、検討の価値はあると思います。

遺産分割のための保険見直し

 人が亡くなると、その方の所有していた財産は相続人に受け継がれますが、相続対策のページで掲載しているように、相続の権利のある方は誰なのか法律で決められています。もし、相続財産の多くは不動産で預貯金は少なめであるという場合は、跡継ぎの方以外の方(例えば娘とします)への相続でトラブルになることがあります。ここでは加入保険を活用した遺産分割のための保険見直しを解説します。

  • ◎保険金受取人の検討
  • 前述したように保険契約には「保険契約者」、「被保険者」、「保険金受取人」の3名が指定されています。子どもが息子と娘の4人家族では、普通は父親が契約し、父親が死亡したときに母親が死亡保険金を受取るという加入形式が多いようです。

    もし父親が亡くなったら、配偶者と息子、娘がそれぞれ決められた相続割合を受取る権利があり、跡継ぎの息子は土地家屋を相続できても、娘が受け取る相続財産が不足することが想像されます。このケースでは、死亡保険金受取人を母親と娘の二人に設定しなおす。さらに受取り割合も決める、あるいは娘1人にする。などの変更で直接娘に死亡保険金を相続財産として渡すことができるので、相続発生時のトラブルを防ぐことができます。

相続税の負担軽減のための保険見直し

 死亡保険金は被保険者が亡くなったときに受取り、それは「みなし相続財産」として亡くなった人の相続財産に加えて相続税の計算をすることになります。

  • ◎死亡保険金の基礎控除を理解しよう
  • 死亡保険金の基礎控除は次の式で計算され、死亡保険金額から控除されます。

      法定相続人の数×500万円

    父親が亡くなり、母親と子ども2人が相続人という場合には、1500万円が基礎控除額になります。つまり、死亡保険金が1500万円までであれば、亡くなった人の相続財産に加える必要はないということになります。
    保険料を父親が払うという事は、相続財産を減らすという効果があり、支払った保険料により死亡保険金が準備され、一定の基礎控除で相続税の負担が無くなる。もしくは相続税額を減らすことができるということになります。ご高齢になってからの見直しには適さないとは思いますが、一時払いで新規に保険加入することで相続税対策になります。またこのスキームを次世代へ伝えて頂ければよいと思います。